それなのに・・・

オレは出会ってしまった。

『運命の人』に・・・


毎日仕事は時間との勝負だった。

一分一秒が俺には大事な時間だった。


早足で階段を上がっていると、

突然、彼女が俺に倒れこんできたのだ。


彼女はまだ若く、どう見てもまだ大学生くらい。

ここに入社でもするのか。

そんなことを思いながら、上辺だけの声をかけた。


「大丈夫ですか?」

「・・・すみません」


そう言ってそっと俺から体を離し、見上げた彼女の顔を見た俺は、

その場の時が止まったように感じた。

日本人にも、外国人にも見える彼女。

クルリとした可愛らしいパーマ。ほんのり青い瞳。


上辺だけの言葉は、いつの間にか本気の言葉に変わっていた。

足を捻ったのだろう。少し顔を歪めた彼女。

心配になり、もう一度問いかけた。・・・が。

彼女は頬を染め、アタフタしながら大丈夫だと言った。

・・・彼女が気になったが、次の会議に遅れそうだった俺は、

後ろ髪をひかれる思いでその場を後にした。


・・・その後、彼女の名前と所属部署を知ることになる。