…いつの間にか帰ってきていた須藤課長が、そう言った。

その言葉に、飛鳥さんは少しムッとした。


「噂など、全く構わない。現に、私と薫子は夫婦なんだから。

それより須藤、なぜこんな時間まで薫子が会社にいる?」


「…申し訳ありません、一緒になって仕事をしていたら、

仕事の事をすっかり忘れてしまって・・・

薫子さん、仕事の呑み込みも早いし、デザインの才能もピカイチでして。

一緒に仕事をしていると、『色々』と楽しくて、つい」

そう言って頭を下げた須藤。


…『色々』の意味に、どんな言葉が隠れているのか、

飛鳥さんは知らない。

・・・そして私もまた。

さっきの行動と、今の言葉が一致していなかった。


…私の頭には、いつもどんな時も、飛鳥さんがいるのに。