「まぁ、君たちの中を壊すつもりは毛頭ないよ。

オレはただ、恋愛を楽しみたいだけ」

そう言って微笑んだ須藤課長は、書類を持って、

オフィスを出ていった。


…どれくらい、その場に立ち尽くしていたのか。


「・・・薫子」

後ろの方から、私を呼ぶ声がした。

私は無表情のまま、振り返った。


「…何かあったのか?携帯に電話しても出ないから、

まさかと思って来てみたら、やっぱりここにいた」

そう言って私を抱き寄せたのは。


「…飛鳥さん」

温かな腕に抱かれ、緊張の糸が解けた。

私は力なく、飛鳥さんに倒れ込む。


「・・・薫子、一体どうしたんだ?

無理をするくらいなら、仕事する必要はないんだぞ」


「・・・そんなこと」

これは仕事のせいなんかじゃない。




「・・・こんなところで抱き合ってたら、

社内の噂になりますよ、西条社長」