それから苦戦すること数分後。

「・・・取れた」

そう言って微笑んだ須藤課長。

「ありがとうございます、助かりました」

そう言って安堵の溜息をついた私。



そして。


「それではお先に失礼します」

私は、オフィスの外へと。

「…待って。忘れ物」

「・・・え?・・・?!」

…忘れ物、そう言って受け取った物は、

『物』ではなかった。


私は、目をパチクリして、須藤課長を凝視。

「…今、何を?」

「え?・・・あぁ、忘れ物の、キス?」

須藤課長は、何食わぬ顔で呟いた。


「・・・何でこんなこと」

「もちろん、西条さんが、いや、薫子ちゃんが気に入ったから」


「…私人妻ですよ」

「…だから尚更奪いたいんだよ、特に君は、西条社長の奥様だからね?」

…返す言葉もない。