…それから仕事に打ち込んだ俺は、

週末まで、ハードスケジュールをこなした。

薫子の両親に挨拶をする為、週末に時間を作る為。

そのおかげで、毎日帰るのは、午前0時を回ることが多かった。


「そんなに無理をしないでください、飛鳥さん。

挨拶するのが遅くなっても、私は全然かまいません。

そんな事より、飛鳥さんの体の方が心配です」


俺の背広を受け取りながら、心配そうな顔で、

そう言った薫子。…俺は嬉しくなって、薫子を抱き寄せた。


「俺は大丈夫だ。順番が逆になってるし、

早く挨拶だけでもしておきたい・・・薫子のお父さんは、

結納だってしっかりやりたい人かもしれないしな…

籍を入れてしまってるから、きっと怒るだろうけどな・・・

殴られる事くらい、覚悟はしてる」


「・・・お父様なら、やりかねないかも・・・です」

不安そうな顔になった薫子。


「薫子が心配する事じゃない。父親なんだから、

娘の事になると、何かと心配なんだ。・・・だから、

俺はどんなことでも受け止める。

薫子とのことを認めてくれさえするなら、殴られる事くらい、

なんてことない」


そう言った俺は、薫子に優しく口づけた。