「星野さんが来てくれたので、僕もやっと帰れます」


「・・・え??」

「ちゃんと来てくれたことを確認してからじゃないと

帰れませんよ…社長はもう先に来てお待ちです。

一番奥の夜景がよく見える窓側に座ってらっしゃいますから」


「・・・はぁ」


「あ、貴女は、星野さんと同じ受付の方ですよね」

私から玲子さんに視線を移した石坂さんは、そう言ってニコッとした。


玲子さんは少し頬を染め頷いた。

石坂さんもメガネをかけたイケメンですものね。

赤くなるのもわかります。


「連れてきてくださって、ありがとうございました。

帰りは僕がお送りします」


「そ、そんな、結構です!一人で帰りますから」

玲子さんは慌てて断っている。

仕事の時みたいにシャキッとしていない玲子さんは、

なんだか可愛く見えた。


・・・え。


「それじゃあ、僕たちは行きますね。

社長の事を、宜しくお願いします」


そう言った石坂さんは、玲子さんを連れ、

さっさとレストランを出ていってしまった。

…どうしよう。

私の目線の先には、社長が外の夜景を見つめているのが見える。

やっぱり気乗りしない私は、帰りたくてしょうがない。