「俺の我が儘なのに?」

「我が儘なんかじゃありません。確かにきっかけはあれですが、

まだ住んで間もないし、飛鳥さんの全部を知ったってわけじゃありません。

でも、結婚してから知っていくのも悪くないかなって」


「・・・」


「仕事もしたいですけど、それが理由で結婚したいんじゃないんですよ。

私だけに見せてくれる、社長じゃない素の飛鳥さんを、これからもずっと、

私だけに見せてくれるって約束してください」


「…当たり前だ。嫉妬してる所なんて、

他の奴なんかに見せない。それに、優しい人間でいられるのも、

薫子の対してだけだ」

そう言った飛鳥さんは、どことなく恥ずかしそうに、笑って、

私を優しく抱きしめた。


付き合う期間と、結婚は比例しない。

そんな事もあると思う。

私の初めてを、初めて好きになった飛鳥さんに、全部あげたい。

そう思えるから、私は飛鳥さんと結婚する。

嫉妬する飛鳥さんも、

真剣な飛鳥さんも、

優しく微笑む飛鳥さんも、

心配そうな顔で私を見る飛鳥さんも、

凄く、凄く、大好きだから。


「薫子」

「・・・なんですか?」

「仕切り直しだ」

「・・・え?」