そんな雰囲気を、一人の声が立ちきった。

「・・・飛鳥さん」

「さ、西条社長?!」

私の声と、須藤の声が重なった。

そして、私と須藤は目を見合わせた。


「西条社長と、お知り合いですか?」

須藤は私に問いかける。


「・・・一応」

付き合ってる事など言えるわけもなく、

そう答えた私。


「一応とはなんだ、婚約者のくせに」

飛鳥さんは不機嫌そうに答えた。


・・・婚約者?!…あながち間違いではないけれど、

決定していないのに、社員にバラしても、いいの?

私は冷や汗をかいた。


「こ?!・・・婚約者・・・なんですか?!」

須藤は驚きっぱなしで、私を飛鳥さんを交互に見ている。


「そんなに驚くな事でもない・・・で?

君は、薫子に、何の用があって話していたんだ?」

相変わらず不機嫌な飛鳥さんが、冷たい眼差しで須藤に問いかける。



「・・・えっと」

「…ぁ、星野、と言います」

私は慌てて名乗った。名前を言ってなかったから。