「どうした、石坂・・・」

書類を束ね、目線をこちらに向けた飛鳥さんは、

まさに開いた口が塞がらない、そんな顔をしていた。


「・・・なんて顔を、してるんですか、社長」

笑いを必死に堪えながら、石坂さんが飛鳥さんに言う。

その言葉にハッと我に返った飛鳥さんは、サッと口をつぐんだ。

・・・その行動が可愛く思えて、クスッと笑う。

…飛鳥さんは、いつもの冷静さを取り戻し、声を発した。


「どうした、薫子。連絡もナシに急に」

「すみません、どうしても、これを渡したくて」

私はそ~ッと、お弁当を差し出した。


「わざわざ作って来てくれたそうですよ。

受付から連絡があったんですけど、内緒にしたのは僕ですので、

星野さんを叱らないでくださいね」


・・・怒るわけがない。それは分かっていた。

…だって、飛鳥さんの顔が、明らかに緩んでいたから。

それでも、一応、そう言った石坂さん。


「…あの、石坂さんも一緒にどうぞ」

「・・・え?」

お茶を淹れに行こうとした石坂さんがこちらを向いた。

「…奥様のお弁当があるかもしれないんですけど、

いつもお世話になっているので、よかったら・・・」

「いいんですか?」

・・・そう言って、飛鳥さんの顔をチラッと見た石坂さん。