私の言葉に笑顔で首を振る。

「・・・それ、社長への愛妻弁当ですよね?」

「あ!・・・愛妻弁当なんて大そうな物では」


「これはここだけの話しですけど、星野さんの作ったお弁当。

僕に毎回自慢してるんですよ…可愛いでしょ?」


「・・プッ。そうなんですか?」


「ホント、最近の社長は、星野さん一色のようですね」

「・・・でも、会食とかも、あったりするんじゃないですか?」


…それはずっと気になっていた事。

毎回、空になった弁当箱を持って帰ってくる飛鳥さん。

でも、外に出たり、会議の最中に、お弁当があったりと、

私のご飯が必要ない時も、あると思うんだけど。


「あぁ。心配なさらなくていいですよ。

社長は、会食もよそで出たお弁当も、食べるふりして、

ほとんど食べてないんです、星野さんのお弁当が食べたいがために」


「…他の方の気に障るんじゃ」

「社長は元々、あまり食事を取る方じゃなかったですから。

周りは何とも思ってませんよ。…それより、社長室の中へどうぞ。

まだ仕事中ですが、もう終わるころでしょうし。

星野さんが来たら、凄く、喜ぶでしょうね・・・プ。

どんな顔するか、楽しみです」

そう言って、私を中に招き入れてくれた石坂さん。

…私は、そっと、社長室の中に入った。


「…社長」

石坂さんの声が、社長室に響く。