「アポがないお客様をお通しする事は、

禁じられておりますので・・・」


「・・・でも、あの」


「大体、そんな変装してるお客様を、

誰が通すと思いますか?」


「・・・」

…確かに。

深く帽子をかぶり、サングラスに、マスク。

他の社員に見られたくない為とは言え、明らかに不審者。

…仕方がない。そう思われてるからには、きっと、

絶対通してはくれないだろう・・・

私は肩を落とし、くるりと、体を反転させ、玄関に向かって歩き出した。



「待ちなさいよ、薫子ちゃん」

・・・その声は。

私は思わず振り返る。


「・・・れ、玲子さ~ん」

私は大好きな玲子さんに抱きついた。


「もぅ、こんな変な格好してどうしたの?

これじゃあ、あの子が通さないのも無理ないわよ」


「…他の人の目が気になって」

「…フフ、バカね?貴女を知ってる人は、そんな格好してても

分かるわよ…私が良い例」

「・・・あ」