「私に気を遣って、その人との約束断ったの?」

優しい口調で問いかけられ、私は俯き加減で、

それに応える。



「…いえ、断るつもりで、何度も電話をかけたんですけど、

仕事をしているのか、繋がらなくて」



「…エ?それじゃあ、その人、待ち合わせ場所に行ってる

可能性もあるんじゃない?…待ち合わせ時間は?」


「…7時です」


「ウッソ!もう7時じゃない!待ち合わせ場所はどこよ?

私の事なんて放っておいていいから、行きなさい!」


「そ、そんなことできません!私はその人より、

玲子さんの方が、何十倍も大切な人ですから」

私の言葉にニコッと笑った玲子さん。




「嬉しいこと言ってくれるじゃない・・・でもね?

私とはいつでも食事に行けるんだから、その人の所に

行きなさい…で、場所は?」



「…〇〇〇レストランです」


「あら、すぐ近くじゃない」


「…はい、でも、あんまり行く気がしないんです」

「…どうして?相手はどんな人なの?」


「・・・」

「薫子ちゃん?」


「…うちの会社の…社長・・・です」