「着替え済んだ?じゃあ行こうか」

玲子さんの声に、少し上ずった声ではいと答える。


一軒のお店に入り、注文表を見つめる。

でも、心ここにあらずと言った感じで、

なかなか注文が決まらない。


「どうかしたの、薫子ちゃん?ぁ、お酒苦手とか?」

「エ、いや、そんなことありませんよ!お酒は好きです」


ハッとして、咄嗟に応える。

「じゃあ、ビールでも頼もうか」

そう言った玲子さんは店員を呼び、オーダーする。


…私は時計ばかりが気になり、ソワソワしてる。


ただ今の時刻、午後6時10分。

待ち合わせ時間まで残り50分。


もう一度電話をしにトイレに向かう。

…が、やっぱり繋がらない。

もう、待ち合わせ場所にすら来ないんじゃないかしら?

だって社を出ていくとき、凄く急いでたし。

仕事があるんだからもう、きっと・・・

そう思い始めたものの、時計に目がいってしまう。


「・・・もしかして、誰かと待ち合わせでもしてるんじゃない?」


突然、玲子さんがそう言った。

私は目を見開く。

そんな私を見て、玲子さんはやっぱりと

笑って溜息をついた。