「ったく。そんな理由で、仕事も男も諦めるとは、

とんだお嬢様だな」


「・・・うるさい」


「…それで、水野と結婚でもするのか?」

「なっ!何で水野さんと結婚なんてするのよ?

するわけない・・・しないよ、したくもない」


「…ハハ。水野も嫌われたもんだな。

じゃあ、水野はオレが何とかしといてやる、一応、

薫子の兄貴だしな、守ってやるのも当然だ。

・・・しかし、西条との事は、自分で何とかしろよ。

別れたくせに、未練タラタラな顔してるぞ」


「…ぅ」

ズバズバと言う龍之介。いつもそう。

私の心を読んじゃって、ズバズバ言ってくれる。

・・・でも、ちゃんと私の為を思って言ってくれてるから、

怒れない。


「最近、水野がしつこいんだよ。めんどくせえ。

何であんな男がまわりをうろつくんだ?

そろそろキレそうだったんだよ…でももしもの事も考えて、

黙ってたんだけどな、薫子の気持ちが知れたから、

コテンパンに打ちのめしてやる」

そう言った龍之介はニヤッと何かを企んだような笑みを浮かべ、

部屋を出ていった。

…こういう時の龍之介が、一番手に負えない。