昨晩は、本当に幸せだった。…一生分の幸せを、

飛鳥さんから貰った。…だから、私は飛鳥さんとの

別れをする決意をした。

・・・別れたくなんてない。大好きだから。

私と一緒にいる時の飛鳥さんが、本当に愛しい。

でも、自分の気持ちだけで、飛鳥さんの傍にいる事は許されない。


…私は星野組の娘だから。


そのせいで、飛鳥さんが苦しむ所なんて見たくない。

疫病神になんてなりたくない。


仕事をしながら、時々見かける飛鳥さんの顔は、とても穏やかで、

私を見つめるその瞳は、本当に優しくて、胸が締め付けられそうだった。

でも、それに気づかれたくなくて、私は飛鳥さんに笑顔を向ける。


…これが、私の最後の笑顔だから、

飛鳥さんには、私の笑顔を覚えていてもらいたい。


その日の夕方、私は玲子さんに言った。

「玲子さん、今月末で、仕事を辞めます」

「・・・え?何の冗談?」


玲子さんは笑いながら私に言った。

…でも、私の真剣な顔を見て、玲子さんの顔から笑顔が消えた。


「・・・本気、なの?」

「・・・はい、すみません。とても良くしてもらったのに」

私は玲子さんに深々と頭を下げた。