「凄い荷物ですね」

両手に持った荷物を見て、石坂さんが目を丸くする。


「…社長が帰ってくるまでに、料理でもしようと思って」

そう言って私はニコッと微笑む。

それを見て、石坂さんも微笑み返す。


「社長もきっとお喜びになりますよ。

荷物、後部座席に置いておきますね」

そう言った石坂さんは私の両手から、軽々と、

荷物を取り、後部座席に乗せた。

そして私は、荷物の横に乗り込んだ。


…車は、静かに走り始め、街の中をなめらかに通り過ぎていく。

私はそんな街を、ボンヤリと見つめていた。


「星野さんと、社長が上手くいっているようで、

僕も嬉しい限りです」

ミラー越しに私をチラッと見て、そう言った石坂さん。

私は笑顔で頷いた。


「・・・知ってます?社長は貴女の事になると、

人が変わるんですよ」


「・・・え?」


「普段は凄くクールな人なのに、貴女の事になると、

クールの仮面がいとも簡単に崩れるんです・・・

星野さんの事、本当に愛しているんでしょうね。

全身全霊で、貴女を守っているようですよ・・・

前の社長も好きですけど、僕は今の人間味溢れる社長の方が、

もっと好きです。…星野さん、社長の事、

宜しくお願いしますね」