「お疲れ様でした」

上辺だけの挨拶をして、横を通り過ぎようとした。



「薫子ちゃんの、親御さんが、

星野建設の会長だと言う事を知ってるのかな、西条社長は?」


「・・・・」

真横に来たところで言われ、ピタッと足が止まる。

・・・そして、ゆっくりと水野さんに視線を向けた。

水野さんの顔は、相変わらずの笑顔で・・・

その笑顔の奥には何を隠しているのか・・・


「星野組・・・西条株式会社にとって、キミは、

疫病神になるかもしれないよ」


「…どういう意味ですか?」


「やっぱり、企業にとって、そんな所と繋がりがある女性と、

付き合うのは、周りからの印象が悪い・・・

西条は、飛鳥さん一人でここまで大きくしてきた会社だ。

君のせいで、会社の信用を失えば、簡単に壊れるんだよ」


「・・・」


「西条社長を本気で愛してるなら、今の話しを聞いて、

今後の身の振り方を考えた方がいい・・・

西条が君を受け入れられなくても、水野エンタープライズの

後継者のこのオレなら、キミを守る事も、幸せにすることも、

そして何より、君と、西条社長が互いに幸せになる事も、

きっと可能だ・・・よく考えて」