「ええ、その男は、西条株式会社社長、

西条飛鳥・・・ですよ」


笑顔だった水野さんの顔から笑顔が消えた。

2人は一体どんな関係なのか?


「…貴方は、西条に薫子を就職させて、

返って裏目に出た事を知っていますか?」

そう言った龍之介の顔には、笑顔が浮かんでいた。


「…そうですね、確かに裏目に出た。

・・・・いや、むしろ、私のシナリオ通りだと言ってもいい」

水野さんの言葉に、龍之介は眉をひそめた。



「…水野さんが何を企んでいるのか知りませんが、

思い通りにはなりません・・・

私は、西条社長を、…飛鳥さんを、愛しています」


水野さんにそう言って、席を立った。


「それが言いたかっただけですから。

私はこれで失礼します。お母様、お兄ちゃん、行きましょう」

私を先頭に、龍之介、お母様とその席を後にした。


・・・が。

私の足は、床に張り付いたように動かなくなった。


「…アンタ」

龍之介の口からそんな言葉と共に、

呆れた表情が浮かんでいた。