【飛鳥side】

2人きりの時間は、たった2時間ほどで終わってしまった。

行く途中は凄くウキウキとしてる様子だったのに、

帰りは、笑顔は全くなく、何かを考え込んでいるようで、

なかなか話しかけられない感じだった。


「・・・ここでいいのか?」

「…はい、ありがとうございました」


都心から少し離れているへんぴな所で、薫子は車を降りた。

…このへんに実家があると言うが、

民家が見当たらない。

…少し心配になりながら、もう一度問いかける。


「…本当にここでいいのか?家なんて、見当たらないが」

「・・・いいんです」

そう言った薫子は、なんだかソワソワしてる様子。

目線は泳ぎ、全く目を合わせない。


「・・・気をつけて帰れよ」

「はい、飛鳥さんも、お気をつけて」

俺の車が見えなくなるまで、薫子は見送っていた。

カーブに差し掛かり、薫子の姿が見えなくなった。


…妙に、引き返したい衝動に駆られる。

1キロほど走ったところで、車を止めた。

・・・やっぱり気になる。

そう思った俺は、すぐさま来た道を戻っていった。