蒼甫君は、中谷さん演じる女の子に失恋する男の子の役だった。


つらそうな顔をする蒼甫君が、あの日の蒼甫君と重なって見えて、胸の奥がキリリと痛んだ。


でも、スクリーンの中の蒼甫君は、すごく綺麗に輝いていて。


蒼甫君は生まれ持って、こういう世界に入る人だったんだと思い知らされた。


これで良かったんだ。


私は間違いなかったんだ。


蒼甫君が進む世界を邪魔しなくて良かったと、本当に心からそう思った。


映画館に響き渡るなつかしい蒼甫君の声が、私の脳内にハッキリと刻まれていく。


その言葉、ひとつひとつが愛しくて、恋しくて。


あぁ、どうしてこの人は、こんなに綺麗に輝いてるんだろう。


全部、独り占めしてしまいたい。


一番、近くで見ていたい。


だけど、どんなに抱きしめあったって、何百回キスをしたって。


私はきっと、蒼甫君を手に入れることはできないんだ。


あなたを手に入れられないのなら、


私はいっそのこと、


あなたになってしまいたい。