「はぁっ、はぁっ」


確かあのベンチだ。


あそこで俺らは約束したんだ。


俺は心臓が潰れるんじゃないかって思うくらいに走った。


そして、ゆっくり立ち止まる。


「……っ」


桜の木の下に、ぽつんと置かれたベンチ。


そこにいてほしい人はいなくて。


バカか、俺は。


必死に走って。


あんなヤツのために…。


自分の誕生日なのに。


俺は力尽きて、ベンチにドカンと腰掛けた。


はぁと白いため息が漏れる。


「ん…?」


なんか踏んだ。


パリパリ音が鳴る。


げっ。まさか食べ物系?


ズボン汚したか?


俺はおしりを上げて、下敷きにしてしまった物体を手に取った。


「なんだ?これ」