「洋平っ!」


「な、んだよ」


「俺が連れて帰る」


「「はっ?」」


同時に声を上げる中谷さんと洋平。


「えっ?どういうことなの?」


中谷さんが、目をぱちくりさせる。


「すみません。あの子、俺の高校の友達なんです。

家も知ってるんで、連れて帰ります。

洋平、中谷さんのこと頼んでいい?」


「あ?えっ。あ、ああ」


戸惑う二人を尻目に、俺はカウンターへと遠慮なく入った。


「おい、立てるか?」


「んー」


フラフラしている優月のエプロンを素早く外す。


「洋平、コイツの荷物は?」


「あ、あぁ、こっち」


そう言うと、洋平は優月の上着とカバンを持ってきた。


俺は優月に上着を着せた。


そしてお金を洋平に渡すと、優月を抱き上げた。


「おい、その抱き方はどうかと思うぜ」


「なんだよ。文句あんの?」


「お姫様抱っこは、恋人にするものだろ?」


「いいじゃん。元はそうなんだから」


中谷さんに聞こえないように呟けば、洋平は何とも複雑そうな顔をした。


「じゃあな」


俺は優月を抱えたまま、店の外へ出た。