「ゆづちゃん、これ持ってって」


「はーい」


ゆ、ゆづちゃんだと?


なんだ、それ?


いつの間にそんなに仲良くなってんだよ。


ってかさ、なんで優月は洋平の家でバイトなんかしてんだ?


この二人、数回しか会った事ないはずだろ?


どうしてなんだ?


「優月。これ切ってみるか?」


「あ、うん」


そう言って何か、食材を切り始める優月。


おいおい、今度は呼び捨てかよ。


洋平は優しい目で、優月の手元を見つめている。


何?この甘い感じ。


「…どうしたの?神崎君。さっきから顔怖い」


中谷さんが、俺の顔を覗き込む。


「えっ?そんなことないですよ」


「そう?
ねぇ、来週もスケジュールびっしりだったよね?」


「そうっスね」


「お肌が荒れそう…。でも仕方ないわよね。

神崎君も受験生なのに大変よねー」


「まぁ、なんとか乗り切りましょうよ。映画公開まで」


「そうね」


中谷さんと会話してても、俺は優月が気になって、なんだかうわの空だった。


正直、何食ったかも覚えていない。