「契約を破棄したら、お金が必要ですか?」


「はっ?」


「いくらいるんですか?」


「な、何なの?あなた」


薫さんは、顔をしかめている。


違約金がいるって言うなら、私の貯めたバイト代を全部つぎ込んだっていい。


それで瀬名君を助けられるのなら……。


その時、瀬名君が私のブレザーの袖をそっと引いた。


「優月。契約解除は出来るんだ、俺」


「え…?」


「いつでも辞められるんだ」


うそ…。


瀬名君…。


「それなら、どうして瀬名君この仕事してるの?」


解除できるんなら、今すぐにだって。


「あなたにはわからないことだわ」


薫さんが、私を鋭く睨む。


「あなたには入り込めない、私と裕樹の問題なのよ」


なに、それ…。


入り込めないって…。


「つまり、3年前の妊娠のことですか…?」


薫さんは、勝ち誇った顔をしてそうよと言った。