「お父さん、今ちょっといい?」


その日の夜、私はリビングにいるお父さんに声をかけた。


「ん?どうした?」


テレビを観ていたお父さんが、私に顔を向ける。


「お父さん、私…進路どうしようか」


「進路か。

お父さんも話そうと思ってたんだ」


お父さんはテレビの電源を落とした。


私もソファに腰掛ける。


「お父さん、私。

自分がやりたいことがわからないの。

行きたい学部も、行きたい大学もわからない。

何が勉強したいのかも、わからないの。

こうなると、やっぱり就職しかないのかな…」


私の言葉に、お父さんがスッと腕を組む。


「うーん…、まぁねぇ。

お父さんなんかは、経済学部を出てね。

普通の企業に就職しちゃったわけだけど。

結果、倒産してしまったし。

今の時代、良い大学、良い会社って言うのは、古い考えなのかもしれないね」


本当に、どうしたらいいんだろう。