洋平君が、ベンチに腰掛ける。


私もその隣に座った。


「お前、よく頑張ったな」


「え…」


「神崎と別れたんだろ?」


「……うん。どうして知ってるの?」


「裕樹に聞いたから」


瀬名君から…。


そうなんだ…。


私はさっき買った缶コーヒーを口にした。


「お前を見直した。

正直、お前がそこまで出来るとは思ってなかった」


私を真っ直ぐに見つめる洋平君の目は、いつもみたいに怖い目じゃなくて、優しい目になっていた。


「ごめんな。つらいことさせて…」


「ううん。洋平君がああ言ってくれてよかった。

私、蒼甫君の重荷になるところだった…」


そう言うと、洋平君はなぜか少し泣きそうな顔をした。


「今、イチャさんと一緒に必死で説得してるから。

アイツ、もともと負けず嫌いだろ?

多分、引き受けるんじゃないかと思う。

重光監督も、今月いっぱいまでは返事を待ってくれるみたいだし」


「そうなんだね。

それなら良かった…」


映画を引き受けてくれなくちゃ、別れた意味がまったく無くなってしまうもの。