「静華ちゃん。戻る事は出来ないの」


私の言葉に、静華ちゃんが顔をしかめる。


「どうしてっ?なんで?」


「……足手まといに、なりたくないの」


「えっ?そ、それってどういう意味?」


私は静華ちゃんの顔を見ながら、小さく深呼吸をした。


「私の存在は、蒼甫君の邪魔になるの。

蒼甫君、私といたいからって、来年製作予定の映画の話を断ったの。

主役なのに…。

俳優も辞めるって…」


「えぇっ?」


「みんなが蒼甫君に期待してるのに。

蒼甫君の活躍を待ってる人がいるのに。

それなのに私のせいで……」


話していたら、いつの間にか涙が頬をつたっていた。


「優月ちゃん、それで別れようって言ったんだ…」


私はゆっくりと頷いた。


「かわいそうに…。つらかったね」


「し、ずかちゃ…」


静華ちゃんが、私の背中を撫でてくれる。


「よく言ったね。好きなのに…」


優しい言葉に、私は声を上げて泣いた。


ずっと、こんなふうに泣きたかった。


「優月ちゃん…。蒼甫に正直に話したら?私が話そうか?」


「だめっ。蒼甫君には言わないで。お願い…」


「でも、お互い好きなのに別れるなんておかしいよ」


私は静華ちゃんの腕を掴んだ。


「蒼甫君の才能を潰したくないの。

だから、黙ってて…」


そう言って頭を下げると、静華ちゃんが大きくため息をついた。