「優月ちゃん、今ちょっといい?」


そんなある日の休憩時間、突然静華ちゃんに呼び止められた。


いつもと様子の違う静華ちゃんに、呼ばれた理由がすぐにわかってしまう。


私達は無言のまま中庭に向かい、木の下のベンチに並んで腰かけた。


静華ちゃんは綺麗に足を組んで、私の顔をじっと見つめている。


その視線を感じつつ、私は中庭をただ眺めていた。


「優月ちゃん、蒼甫と別れたんだってね」


予想はしていたけれど、静華ちゃんの言葉に、心臓がドクンと音を立てた。


「どうしてなの?あんなに仲良かったのに。

みんなに色々言われるのが嫌になったの?

それが嫌なら、私だって渋谷だって守ってあげたのに」


ぎゅっと自分の手を握り締める。


「そうじゃないの…」


「そうじゃないなら何?蒼甫の事、嫌いになったの?」


静華ちゃんの問いに、私は首を横に振った。


「嫌いじゃないのに、どうして別れるの?好きな人でも出来た?」


「そんな人、いないよ…」


「優月ちゃん。アイツ荒れまくってるよ。

アイツと同じクラスのさっちゃんも言ってた。様子がすごく変だって。

よっぽどショックだったんだよ、優月ちゃんと別れたこと」


胸の奥が痛いくらいに苦しい。


「優月ちゃん。戻ってやってよ。お願いだから…」


「静華ちゃん……」


「あんなに落ち込む蒼甫、見てられないよ」


蒼甫君…。