「え…」


蒼甫君の顔から、力が抜けていく。


瞳がゆらゆらして、動揺が伝わって来る。


「優月…。ど…うして…?」


ぎゅっと目を閉じる。


心臓がすごいことになってるけど。


ちゃんと最後まで言わなくちゃ…。


「去年の夏。

薫さんが現れたでしょ?

私、すごく落ち込んで。

その時、蒼甫君が彼女になってって言ってくれて。

私、思わずオーケーしてしまったけど。

考えてみたらね。

あれだけ落ち込んだのって、瀬名君が好きだったからじゃないかなって。

ずっと思ってたの」


「優月、やめろよ」


「薫さんに嘘をつかれていた瀬名君を見てて、やっぱり…。

やっぱり私が好きなのは、瀬名君だって気づいてしまったの」


「やめろって言ってるだろ!」


「瀬名君、すごいと思う…。

騙されてるのに、モデルの仕事続けて。

好きでもない仕事なのに、一生懸命ちゃんとやってて。

仕事を辞めるって言ってる蒼甫君とは違うよ」


「お前、いい加減にしろよっ!!」


私の腕をグイッと掴む蒼甫君。


その力強さに、怯んでしまいそうだ。