「なぁ、もしかしてだけど。

洋平になんか言われた?」


瀬名君の言葉に、動きが止まる。


「言われたんだな?」


私は小さく頷いた。


「実は俺にも連絡があったんだ。

蒼甫を説得できないかって。

でも、俺は蒼甫の自由にすればいいと思ったから、あえて何も言わなかったんだ」


洋平君、瀬名君にも頼んでたんだ…。


「しばらく離れてろって言われたの。

蒼甫君が、俳優の道を自分で選ぶまで。

私、蒼甫君の足を引っ張るような彼女になりたくないの」


「優月…」


「だって、重光監督だよ?主演だよ?

こんなチャンスもう二度とないかもしれない。

それなのに、私といたいっていう理由で、それを断ってもいいの?

あとで後悔するかもしれないでしょう?

だから…」


そう言った後、また涙が溢れた。


「優月…」