「優月、どうして?

蒼甫と何かあった?」


心配そうに私を見つめる瀬名君。


私は首を横に振った。


「何もないんだろ?

だったら、どうして?」


涙が溢れて止まらない。


ぽたぽたとスカートの上に涙が落ちて染み込んだ。


「蒼甫君が…、仕事辞めるって言ってて。

主演の映画の話も、断っちゃって…。

それ…、私のせいだから。

私と一緒にいたいからって…。

でも、そんなのダメだから…。

だから、私…」


そう言って、顔を両手で隠した。


「優月…」


瀬名君の低くて優しい声が耳に響く。


私は必死に声を押し殺した。


「優月、蒼甫のために身を引こうとしてんのか?」


私はうんと静かに頷いた。


「お前…、そんな…」


悲しそうな顔をする瀬名君。


その顔に、余計につらくなってしまった。