結局私は蒼甫君に別れなど切り出せないまま、時間だけが過ぎて行った。


映画出演の返事の期日まで、あと10日…。


本当に、どうしたらいいんだろう。


私の様子がおかしいことに、蒼甫君は完全に気づいていて。


1日に最低でも2回は、私の様子を見に1組に来ていた。


そして、この人もまた。


私の様子がおかしいことに、当然ながら気づいていた。


「優月、帰ろう」


「瀬名君…」


瀬名君は、蒼甫君よりもさらに私の変化にすぐ気付く人だ。


ずっと、ずっとそうだった。


だから、今回のことだって気づかないはずがなかった。


「なぁ、優月。

ちょっと今日時間ある?」


「え?どうして?」


「話、あるから…」


瀬名君にごまかしたって、通用するはずないよね…。


私はこくりと頷いた。