放課後、蒼甫君が1組に私を迎えに来た。


「優月、帰ろう」


久しぶりの蒼甫君との下校。


なんだか胸がいっぱいになる。


校庭に出た途端、私から手を繋いだ。


「どうしたの?なんか積極的」


「だって、久しぶりだもん」


後輩達の視線を感じるけど、でも今はそんなことを考えている余裕なんてなかった。


蒼甫君と私は一緒に電車に乗り込んだ。


思えば、蒼甫君とは何度も何度も一緒に電車に乗った。


カフェでアルバイトすることが決まって。


バイト初日の日。


あの日、初めて二人で一緒に電車に乗ったんだ。


電車の中で沢山おしゃべりして。


駅に着いて、私が電車を降りた時。


ドアが閉まる寸前に、蒼甫君は私にこう言った。


『バイト頑張れよー、優月ー』


あれが、初めて名前を呼ばれた日。


『竹内』から『優月』になった瞬間だった。