「お前、恋人の足を引っ張るような女にはなるなよ」


洋平君の言葉に、全身にビクンと電気が走った。


「今、アイツは大事な時期なんだ。

ドラマのチョイ役から、映画の準主役に抜擢されたんだぞ?

そんなヤツ、普通はいない。

それで来年は主演だぞ?

今ノリに乗ってるんだ」


イチャさんも同じ事を言っていた。


すごい快挙だって…。


「普通のヤツが何年かかっても出来ないことを、アイツはいとも簡単に手に入れてしまうんだ。

アイツがそれを望みさえすれば…」


膝に乗せている指に、無意識に力が入ってしまう。


「それなのに女に溺れて、みすみすそれを棒に振っていいはずないだろ?」


「そんな…。溺れてなんか」


「実際そうなんだよ。

お前の事が好き過ぎるんだ、アイツは」


待って。


待ってよ。


「ねぇ、それがどうしていけないことなの…?

ふ、普通に。

普通の高校生みたいに恋愛してるだけだよ、私達…。

それでも、ダメなの…?」


洋平君の表情がどんどん険しくなっていく。