蒼甫君の出演した映画は、無事クランクアップとなった。


これから新春公開に向けて、編集、音楽作業などが行われていくらしい。


蒼甫君はとりあえず、10月はゆっくり出来るみたいだ。


私と蒼甫君は、夏からの空白を埋めるように、一緒にいる時間を大切に過ごした。


人の視線なんて、もうどうでも良かった。


二人でいる時間が、何よりも大切だったから。


少しずつ秋が深まって、私達を包む風が柔らかくなった頃のことだった。


「なぁ、優月」


「ん?」


「俺ね、仕事辞めようと思ってる」


「えっ?」


蒼甫君がふいに、そんなことを言い始めた。


「どうしたの?そんな急に」