薫さんは瀬名君を見つけると、その向かいにゆっくりと座った。


今日の薫さんは白い細身のパンツを履き、上には黒いジャケットを羽織っている。


制服姿の瀬名君と、いかにもOLの薫さん。


普通ならちょっと奇妙な感じなのに、なぜかこの二人は違和感がなくて…。


瀬名君の落ち着いた雰囲気のせいなのかもしれない。


薫さんと一緒にいる瀬名君は、なんだかとても遠い人のように思えた。


ウェイトレスさんがオーダーを取り終わると、瀬名君が何かを話し始めた。


薫さんにしか聞えない程度の、小さな声で。


私と蒼甫君は教科書とノートを盾にして、息を潜めていた。


「ねぇ、蒼甫君。これだとかえってあやしくないかな?」


「……。それもそうだな。

普通に話してた方が自然か」


私達は教科書を盾にするのはやめて、自然に話すことにした。


会話をしながら二人の席に目をやると、薫さんの表情がいつの間にかガラリと変わっていた。


顔が明らかに引き攣り、動揺しているようだ。


それでも瀬名君は、話すのをやめない。


しばらくそれが続いた後、二人は黙り込んでしまった。