「優月…。俺は騙されてたのか?」


「瀬名君…」


「アイツは、ただ俺にモデルになって欲しかっただけなのか?」


私の脳に響くような、瀬名君の低くせつない声。


悲しくて、苦しくて、私はぎゅっと目を閉じた。


「妊娠が、もし嘘だったんだとしたら…」


私から少し身体を離す瀬名君。


息が触れ合いそうなほど近くで、私の顔をじっと見つめる瀬名君。


その顔は、神秘的な月のように綺麗だ。


「俺は何のために、優月から身を引いたの?」


ドクンと心臓が激しく波打つ。


瀬名君が言った言葉の意味を考える。


瀬名君はモデルを始めた事を後悔しているんじゃないんだ…。


何よりも。


何よりも後悔しているのは…。





「何のために、優月をあきらめたの?」