「優月…」


腕に力を込める瀬名君。


「瀬名君、あの…」


「少しだけこうさせて」


瀬名君の声が震えている。


「頼む…。少しだけ……」


美容院から漏れるBGM。


きっとあの中には瀬名君のお母さんとお姉さんがいるはず。


こんなところを見られたら、きっと恥ずかしいに違いないのに…。


それでも私を抱き締める瀬名君は、相当ショックだったに違いなくて…。


私は薫さんの事を疑っていたから、少し冷静に話を聞けたけど。


でも瀬名君は、初めて知らされる事実だもの。


それがどれだけつらいことか。


きっと、混乱しているよね……。