「ごめん、優月。帰ろうか」


顔を起こした瀬名君が、小さな声で呟いた。


ゆっくり立ち上がると、カフェの出口に向かって歩き出した。


瀬名君、背中が寂しそう。


カフェを後にすると、私と瀬名君は駅までの道を横に並んで歩き始めた。


瀬名君は視線を落として、目がうつろになっている。


「瀬名君、タクシー呼ぶから。

瀬名君を送る」


私の言葉に、瀬名君は何も言わずただ立ち尽くしている。


私はタクシーを捕まえ、瀬名君の手を引きタクシーに乗せると、自分も一緒に乗り込んだ。


走り出すタクシー。


少し薄暗くなった空に、街のネオンが次々に点されていく。


瀬名君は頬杖をついて、ずっと外の景色を眺めていた。