「あの…、俺。中学の時、薫にフラれたんです。

何も言わず、突然消えて。

アパートも引き払われてて、連絡先も変わってました。

それって…」


瀬名君が震える声で言葉を紡ぐ。


「あぁ。姉のいつものパターンですね。

あの人、すぐ携帯の番号を変えるんです。

私でさえ、時々繋がらなくなります。

しばらくすると、連絡がありますが…」


瀬名君が口に手を当てている。


「あの、俺。去年海で薫に再会して、またやり直せないかって言われたんです。

ずっと好きだったって言われました」


瀬名君がそう言うと、妹さんは呆れたような顔をした。


「それ、多分嘘ですよ」


えっ?


それってどういう…。


「あなたさっき事務所に行かれてましたよね?あそこのモデルさんなんですか?」


「あ、はい…。そうです」


「姉に誘われましたか?」


「…はい」


瀬名君の表情が曇る。


「もうその時点で怪しいです。

多分、あなたのモデルとしての資質に惚れ込んだのだと思います」


「え…?」