私と妹さんがロビーの椅子に座っていると、すぐに瀬名君がエレベーターから降りて来た。


「とりあえず、ここは出ましょう。

樋口さんに見られても、やっかいだ。

近くのカフェにでも行きましょう」


私達はビルを出て、100メートルくらい歩いた先にあったカフェに入った。


そのカフェはオープンカフェになっていたけれど、私達は奥の目立たない席に座った。


「あの、ごめんなさいね。ビックリさせてしまって…」


妹さんが申し訳なさそうにうつむく。


「あの、今日は樋口さんに何の用事だったんですか?」


瀬名君の言葉に、妹さんはふぅとため息をもらした。


「両親に頼まれたんです。姉の様子を見て来て欲しいって」


「様子を…ですか?」


瀬名君がそう言うと、妹さんはコクンと頷いた。


「姉は高校を卒業してから、一度も家に帰って来てないんです」