「あの人、仕事はよく出来るし、人当たりもいい。

非の打ち所がない人だけど。

唯一、目だけがな…。

あの目はちょっと信用出来ない」


洋平君もそう感じていたんだ。


根拠なんてないけど、動物的な勘とでも言うのか。


「教えてくれるか?」


真顔で言う洋平君に、私はうんと頷いた。


「薫さんが突然、瀬名君の前から消えたって話をしたよね?」


「あぁ。事務所立ち上げと同じ頃だったよな」


「うん。その理由なんだけど…。

薫さん、瀬名君の子供を妊娠してたみたいなの」


言葉にした途端、ブルッと震えてしまう。


じわじわと、罪悪感が襲ってくる。


「まじか…」


洋平君が手を口に当てている。


「瀬名君は受験を控えていたし、重荷になりたくないって考えて、それで薫さんは姿を消したんだって…」


ふぅと長い息を吐き出す洋平君。


「重い事情だな…」


そう言って、悲しい目をした。