「あの人、ちょっと謎が多い。

平気で嘘をつけるタイプかもしれない。

裕樹を傷つけたりなんか絶対しないから。


だから…」


洋平君が目を細める。


切れ長の瞳にドキリと全身が粟立つ。


「その事情、話してくれないか?」


なんだろう。


ずっと前から、私は洋平君が苦手だ。


なんだか、逃げられないような気がして。


「話せよ。力になるから」


「洋平君…」


でも…。


いいのだろうか。


あんなこと口外して…。


「ね、ねぇ。

薫さんに謎が多いって、どういうことなのかな…?」


私がそう言うと、洋平君がスッと腕を組んだ。


「ん…。なんかさ、あの人。瞳が冷たいんだよ。

美人なんだけどさ、冷え切ったような目をしてる」


洋平君の言葉に、ハッとする。


「よ、洋平君。私もそう思ったの。

この前会ってね。

エレベーターが閉まる寸前。

目の色が、変わったの…」


あれは、本当に氷のような瞳だった。