中谷さんは、水色のキャミワンピを着て、可憐な雰囲気を漂わせていた。


「早速だけど、練習しようか」


「はい」


俺らは明日のシーンの読み合わせをした。


意外だったけど、俺はわりとセリフをすぐに覚えてしまうタイプで、撮影中あんまりNGを出さなかった。


30分くらいぶっ通しで練習した後、俺と中谷さんはちょっと休憩することにした。


俺は買っておいたペットボトルの水を、中谷さんに手渡した。


「ねぇ、神崎君」


水を2、3口飲んだ中谷さんが、声を発した。


「神崎君って、いつも携帯いじってるわよね。何してるの?ゲーム?」


「え?あーまぁ、そんなとこです」


俺がそう言うと、中谷さんがフッと笑った。


「でも、すごく顔がゆるんでるわよ。
恋愛シミュレーションゲームでもやってるの?」


「えっ?そんなもんしませんよ」


「ふぅん。じゃあ…恋人だ」


中谷さんが目を細める。


「……違いますよ」


イチャさんに、優月のことは口が避けても誰にも言うなと言われている。


どこから情報が洩れるか、わからないからだ。