鉄橋を通過する電車。


川の近くで釣りをする子供達。


芝生の緑。


優しい木漏れ日。


水面に反射する光。


それらを背景に、私は蒼甫君を収めた。


「いいの撮れた?」


「うん」


「ま、モデルがいいもんね」


「違うよ。腕がいいのー」


「言うねぇ」


「ふふっ。冗談だよ」


私達はまた芝生に腰掛けた。


フィルムいっぱいに撮ったカメラを、カバンに収める。


「蒼甫君。ありがと」


「ううん。こっちこそ。いいモノ見れた」


「えっ?」


「あんな真剣な優月の顔、初めて見た」


「そう、かな?」


そう言われると、なんだか照れてしまう。


「いい顔してたよ」


にっこり笑う蒼甫君。


「ありがとう」


芝生の上に置いていた私の手に、手を重ねる蒼甫君。


風が吹いて、草の香りが漂って来る。


蒼甫君の前髪が、サラサラと揺れて。


その髪が、私の瞼にそっと触れた。


キラキラした木漏れ日の中、優しく重ねた唇に、なぜだか泣きそうになった。


この時の私は、もうどうしようもないくらいに、


蒼甫君を好きになってしまっていた。