蒼甫君が私の前に立つ。


「自然にしててね」


私がカメラを向けると、すぐににっこり笑う蒼甫君。


さすがだ…。


やっぱり芸能人なんだな…。


「優月、カッコイイよ。

カメラを持つ優月、結構似合ってる」


そう言って目を細めた時。


シャッターを押した。


この顔。


私が一番好きな顔。


「あーすげぇっ。魚の群れ。

見た?って見てないか」


口を開けて笑った顔を撮る。


そうか。


私は、蒼甫君が私に向けてくれる笑顔が好きなんだ。


いつも、いつも。


いつだって。


蒼甫君は私に笑顔をくれた。


この笑顔を逃したくない。


この瞬間をつかまえたい。


私は真剣に、ファインダーから蒼甫君を見つめた。


一回、一回に心を込める。


もう二度と戻らない瞬間を収める。


大好きな、大好きなあなたを……。