私は、カバンの中からカメラを取り出した。


「カメラ?これまた随分古そうだね」


「お父さんがくれたの。

これ、フィルム式のカメラなの。

オート式じゃなくて、マニュアルなんだよ」


「えー?優月、出来んの?」


「うん。ちょっと練習したから」


「やるなあ。で、お願いって何?」


きょとんとする蒼甫君に、私はカメラを向ける。


「蒼甫君を撮らせて欲しいの」


「へっ?俺?」


「うん」


「なんでまた急に」


「前に海で写真撮ったでしょ?あれも悪くはないんだけど、このカメラで撮ってみたいの」


「このカメラで?」


視線をふと川の方へ向ける。


太陽の光が反射して、水面がキラキラしている。


「このカメラだとね、失敗が出来ないの」


「えっ?」