それからの蒼甫君は、たびたび映画の打ち合わせに行ったりして、忙しくなっていた。


台本ももらったみたいだったけど、さすがにそれは見せてくれなかった。


公開までのお楽しみって言って笑ってた。


「なぁ、優月」


「ん?」


「明日はバイトないだろ?

俺も何も予定がないんだ。

サーフィンに行こうかと思ってたけど、明日は優月と一緒に過ごしたい。いい?」


「うん、もちろん」


私達は土曜日、久しぶりにデートをすることにした。


始業式の日に行った、お花見以来かもしれない。


のんびりしたかった私達は、私の家の近所にある広い河原へと足を運んだ。


ここの河原は綺麗に整備されているので、地元では人気の散歩コースとなっている。


「なかなか良い景色じゃん」


川沿いに広がる一面の緑の芝生を見た蒼甫君が、嬉しそうに笑う。


「でしょう?ここ落ち着くの。
小さい頃、弟とよく遊んだんだ」


7月の初めともなると、さすがに少し暑くて。


私達は、木陰の下の芝生にそっと腰を下ろした。


心地よい風が緑をゆらゆらと揺らし、川にはカモが数羽泳いでいる。


私達は特に会話もなく、川の景色をしばらく眺めた。