「優月っ」


校舎の方から、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


この声は、蒼甫君と瀬名君…だよね?


二人が駆け寄って来るのを、気配で感じる。


「優月、大丈夫か?」


私の手を取り、ゆっくり立たせてくれたのは蒼甫君で。


「何があったんだよ」


顔のすぐ近くで聞かれるけど、私は答えられずにうつむいた。


その時、細長い眉をキリリと寄せて、渋谷君が口を開いた。


「竹内は、さっきの女子にからまれてたんだよ」


「渋谷君っ」


私はパッと顔を上げ、渋谷君に言わないでと目配せした。