今でも時々思う。


あの夏、薫が俺の前に現れてなかったら。


優月の気持ちは、どっちに向いていただろう。


1年の時から俺達は、触れようと思えば、すぐに触れられる距離にいるのに。


微妙な距離を保ったまま、ずっと平行線のまま。


この笑顔が、全部俺のものならいいのに。


触れたくて、触れたくて、どうしようもない。


その唇にも、その細い身体にも。


だけど、俺のものじゃない。


大切な友達の恋人。




-あの時、薫が現れなかったら-




そればかりが、俺の頭の中でリピートする。